インフォーマテック事件東京地裁H19.11.29判決
(労判957号41頁)
〈要点〉
整理解雇を受けた労働者が退職金の請求とともに、解雇は違法であり不法行為に該当するとして、逸失利益(賃金相当損害金)と慰謝料の支払を求めた事案です。
会社側は、解雇の有効性を主張するとともに損害賠償について、原告は解雇後、解雇を納得して失業手当を受給しているから逸失利益はないと主張しました。
裁判所は解雇を違法と認定し、不法行為の成立を認め、賃金6か月分の損害賠償を認める一方、慰謝料については否定しました。また、原告が失業保険を受け取っている事実は、損害額の評価に影響しないとしています。
〈判文抜粋〉
原告は,違法な本件解雇により,約20年間続いてきた被告会社からの収入を絶たれ,その年齢から見ても再就職が困難な状況に置かれたことを考慮すれば,退職時の給与の6か月分を以て,被告会社による違法な本件解雇との相当因果関係があると解するのが相当である。
被告会社は,失業手当の給付を受けているから,その分を損害額評価に反映すべきであると主張するが,失業手当は,社会政策上の理由から,退職の理由を問わず認められる制度であることから,被告会社の上記主張を採用することはできないし,損害額の評価を動揺させる事情ではない。・・・
原告は,本件解雇により精神的苦痛を受けたとして,慰謝料の請求をする。しかしながら,本件解雇は違法であるとしても,原告は,自己責任の帰結として,被告会社との間で自らの意思によって雇用契約関係を締結しているのであり,上記判断のとおり,本件解雇後の相当期間の得べかりし利益の損害賠償が肯定される本件において,さらに精神的苦痛を損害賠償として認めるのは相当でないので,この点に関する原告の主張は採用することができない。