使用者が労働基準法37条に基づいて支払義務を負う残業手当を支払わず、労働者がその支払いを求めて提訴した場合、裁判所は、同条に基づいて認められる残業手当と同額について付加金として支払いを命じることができるとされています(労働基準法114条)。残業手当のほかに、解雇予告手当(同法20条)、休業手当(同法26条)、年休手当(同法39条7項)の未払金を請求する場合についても同様です。
ところで、裁判所に訴状を提出する場合、訴額(訴えによって得ようとする利益の額)によって定められた印紙を貼る必要がありますが、請求の趣旨に残業手当と同額の付加金の支払いを加えた場合、付加金の額も訴額に加算されるのか否かという問題がありました。
この点、東京地裁では付加金の額は加算されない扱いであったのに対し、大阪地裁では加算されるという扱いでした。同じ内容の訴訟を提起するのに、管轄が東京地裁なら費用が安く済み、大阪地裁だと高く付く、という不合理が生じていました。
しかし、昨年、最高裁第3小法廷(木内道祥裁判長)が、付加金の額は加算されない、という判断を示しました(最判平成27年5月19日民集69巻4号635頁)。これにより、大阪の労働者にとっても付加金の請求をするか否かを判断するにあたって費用を気にしなければならない、という障害は解消されることとなりました。