就業規則において、私傷病による欠勤が一定の期間継続したときは休職を命ずること、そして、休職後一定の期間内に復職できない場合には自然退職となると定められていることがよくあります。
そのような会社で、会社が私傷病で欠勤した初日から当然に休職期間が開始したものと誤解して明示的に休職を命じることなく労働者に誤った説明を行い、労働者もこれに異議を唱えることがないまま所定の「休職期間」に相当する期間が経過した場合、どうなるのでしょうか。
石長事件京都地判平成28年2月12日(労判1151号77頁)では、この点が争点の1つとなりましたが、裁判所は、自然退職したとする会社側の主張を認めませんでした。
裁判所は、就業規則の休職に関する規定が「業務外の傷病により引き続き1カ月を超えて欠勤したとき」に休職を命じるとされていることから、休職期間の始期は飽くまで「1か月を超えた欠勤後に休職命令がされた日」であり、会社が休職制度を説明したことを休職命令と捉えるとしても、事故当日からの休職を命じる休職命令は就業規則上の要件を欠き、無効である、たとえ労働者との間で休職合意が成立したのだとしても、就業規則よりも労働者に不利な合意であって無効である、と判示しました。
判決では、原告の労働者について、事故から1か月と所定の休職期間(6か月)を経過した後の時点で復職可能な状態であったとは認め難く、会社が適切に就業規則に従って休職命令を発していれば自然退職となったであろうことも認定されています。「休職期間の始期」の重要性を改めて意識させる興味深い事例と思い、ご紹介しました。