使用者が有期雇用の労働者に対し、更新後の労働条件を切り下げることを予告し、切り下げに応じなければ更新を拒絶する旨の通告をするケースがあります。
更新が何度も繰り返されているようなケースでは、労働者の意識の上では、期間の定めは形式的なものに過ぎず、したがって、使用者がする上記のような通告は、一方的な契約の変更であって許されるはずがない、と思われても無理はありません。
しかし、法律的には、そう単純な話ではありません。
期間の定めのある契約は期間満了によって終了するのが原則です。使用者がする上記のような通告は、法定更新(民法629条1項)を阻止し、契約を期間満了で終了させる意思の通知と、新たな条件での労働契約締結の申込みとをセットにしたものと理解できます。
労働者が後者の申込みを拒否すれば、形式論理的には、雇用関係は期間満了によって終了するのが原則ということになります。
ただし、更新が反復されたことなどによって労働者が更新に対する合理的期待を有するに至っていた場合には、労働契約法19条によって保護されます。
労働契約法19条は、同条の適用対象となる労働者が更新の申込みをした場合、雇止めに客観的に合理的な理由があって社会通念上相当と認められるときを除き、使用者は従前の労働条件で上記申込みを承諾したものとみなしています。
したがって、労働者が上記のような通告を受けた場合、争うことの当否を判断するには、当該労働者に更新に対する合理的な期待が認められ、労働契約法19条の適用があるのか否か、適用があるとして、使用者側に雇止めをする客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が認められるかを検討することが必要といえます。労働契約法19条の適用があり、かつ雇止めに合理的理由・社会的相当性が認められない場合、使用者が雇止めをしても無効であり、客観的には契約は従前の条件のまま更新されていることになります。