労働者を解雇する場合、30日前の予告が法律によって義務づけられています(労働基準法21条1項本文前段)。予告期間が30日に不足する場合は不足する日数分の解雇予告手当の支払を要します(同項本文後段、同条2項)。
では、この解雇予告期間の日数はどのように数えるのでしょうか。たとえば、11月30日付で解雇するためには遅くともいつまでに予告する必要があるのか、という問題です。
11月1日に予告をした場合、予告日である11月1日と解雇日である11月30日を含めて計算すれば30日ですから、30日前に予告したことになるのでしょうか。
実際そのような計算をしている裁判例があります(東地判H18.4.24判例秘書L06131716)。11月30日付解雇を11月10日に予告したという事実認定のもと、裁判所は、予告期間が21日であったとして9日分の解雇予告手当の支払を命じています。
しかし、この計算は変です。
解雇日・予告日とも含めて期間計算をするなら11月30日付解雇を11月29日に予告した場合でも予告期間は2日あり、予告手当は28日分でよいことになってしまいます。11月30日に解雇を告げた場合でさえ1日の予告期間があることになり、予告手当は29日分でよいことになって明らかに不合理です。
上記裁判例の見解に従うなら、30日分の解雇予告手当の支払が必要となるのはどんなケースなのか想像することすら困難でしょう。
期間の計算方法については、民法138条以下に原則的な規定があり、法令等に別段の定めがない限り、上記規定に従うべきものとされています。期間を遡って計算する場合の計算方法については民法にも規定はありませんが、上記の規定を類推適用すべきものと解されています(四宮和夫・能見善久『民法総則〔第9版〕』412条、大判S6.5.2民集10巻5号232頁)。
「類推適用する」ということは、民法の規定の始点と終点を時間的にひっくり返して考えることになるのでしょう。
つまり、遡りの始点(「○○の日からXX日前まで」などという場合の「○○の日」)については、民法140条を類推し、「○○」がその日の24時ちょうどであれば、その日を算入してその日から起算し、24時ちょうどでなければ、その日を算入せずに前日から起算することになり、遡りの終点(始点から「XX日前までに△△する」とされている場合の「XX日」の限界)については、民法141条を類推して、期間の初日の開始(午前零時)時点と解することになるのでしょう。実際に△△すべきなのは、その前日までということになります。
これを解雇予告について考えると、解雇日の24時に解雇の効力が発生するのだとすれば(通常は予告された解雇日が終わるまでは労働契約上の地位があるはずで、そう解してよいと思われます。)、解雇日を含めて解雇日から遡って予告日との間に24時間まるまる含まれる日数が予告期間であると考えられます。予告日と解雇日が同日なら、24時間含まれる日はゼロですから、予告期間は0日になります。
すなわち、解雇予告手当として請求できるのは、解雇予告日の翌日から解雇日までの日数を30日から控除した日数分です(『別冊判例タイムズ№27』103頁)。
たとえば、吉村商会事件大地決S6.3.11(労判473号69頁)は、6月21日に6月29日付解雇を予告したという事案で解雇予告期間を8日であるとし、平均賃金22日分の解雇予告手当請求権が発生したと認定しています。こちらが正しい計算方法だと考えられます。